大分建設新聞

四方山

停戦を

2023年12月19日
 人間とは愚行を繰り返す生き物なのだろうか。中東パレスチナ自治区ガザを覆う戦火。報じられる映像を見る限り、瓦礫の山と化したのは民家であり、泣き叫んでいるのは子どもたちであり、女性たちである。イスラエルに言わせると、ゲリラの追討というのが名分だが、無差別の殺傷に大義などあろうはずがない▼国際医療支援組織「国境なき医師団」のメンバーとして、ガザの病院で救命活動に当たり、このほど帰国した中嶋優子医師の会見をネットニュースで見た。犠牲者の多くが女性や子どもであることを明かした上で、「生き延びても、家族全員を失った子どもを何人も見た。自分たちがやっていることは無力だと思った」吐き出される言葉は悲痛だった▼現地の人から何度かこう言葉を掛けられたという。「日本は第2次世界大戦で大変だったと知っているよ。みんなで力を合わせて素晴らしい国をつくったんだよね」そして中嶋医師はこう締めくくった。「現地の人たちが焼け跡から立ち直った日本に、自分たちの希望を重ねている」▼今の日本を…などと茶々を入れることを許さないような切迫感あふれる言葉に、現地の悲惨な状況を思い知らされた。作家の村上春樹さんのスピーチが頭をよぎる。2009年にイスラエルから文学賞を贈られ、同地で開かれた授与式で村上さんはこう述べた。「高く強固な壁とそれに打ち砕かれる卵があるなら、私は常に卵の側に立つ」▼壁とはイスラエル、卵はガザのたとえである。「壁がどれだけ正しく、卵がどれだけ間違っていたとしても、卵の側に立つ」その前年、イスラエルはガザに大規模な攻撃を行っていた。まさに当事国での発言であるだけに、勇気が必要だったろう。即時停戦を―。「希望の国」から私たちの声を届けたい。痛切に思う。(熊)
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