大分建設新聞

四方山

甲子園むかし

2023年12月13日
 コロナ禍のため各都道府県の独自開催となった2020年夏の高校野球大分県大会。優勝した津久見高校の元野球部員が11月29日から12月1日まで甲子園球場で開かれた甲子園高校野球交流試合に参加した。夏の甲子園をやり直そうと、元選手の有志たちが企画した。全国から当時の各都道府県代表など42チームが参加して、かなわなかった「甲子園出場の夢」を果たした▼戦前から甲子園は学校球児の憧れの場所であり、野球を通じて全国の旧制中学、農・商業校の生徒が交流した。日本本土だけにとどまらず、台湾や朝鮮、当時の満州まで及んだ。朝鮮と満洲は1921年の第7回大会でデビュー▼2年遅れて台湾からも代表校が送られるようになった。31年に台湾代表として出場した嘉義農林学校(現・国立嘉義大学)は、快進撃で決勝戦まで駒を進め、愛知県代表の中京商業(現・中京大学中京高校)に敗れるまで連戦連勝した。決勝戦は延長25回の死闘となり、試合時間は4時間55分に及んだ▼嘉義農林は日本人、漢民族系の台湾人、先住民族の混成チームで、監督は日本人の近藤兵太郎。野球のルールもよく分からない野球部員を特訓した。このドラマを描いた映画「KANO 1931海の向こうの甲子園」が2014年に台湾で制作され、3億台湾元(約13億円)以上の興行収入を記録する大ヒット作となった。俳優の永瀬正敏さんが近藤監督を演じたこともあり、日本でも上映された▼嘉義農林は台湾南部にある嘉義市にある。人口約27万人の都市で、森林鉄道で有名な阿里山の窓口となっている交通の要衝。のんびりとした雰囲気が魅了的だ。日本統治時代には多くの日本人が住んでおり、嘉義農林も日本人だけでなく台湾人も学べる学校だった。日台の絆を強く感じさせるドラマである。(ゴウ)
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