大分建設新聞

四方山

キックバック

2023年12月12日
 高校時代の苦い思い出である。ツッパリの先輩に言われてダンス・パーティーのチケットを売りつけられた。いまから40年以上も昔の話だ。「本当は1000円だけど、500円でいいよ」。後難を恐れて泣く泣く2枚買わされた。ダンスという柄でもなかった。行くこともなく1000円はドブに捨てた格好になった▼その先輩もまた相当数のチケット販売を割り当てられ、手当たり次第、後輩に声を掛けて強引に押しつけていた、という話を後から聞いた。学校当局の知るところとなり、退学処分になった。他愛のない話を思い出したのは、例のパーティー券を巡る自民党の裏金疑惑のせいである▼安倍派など党内主要派閥の政治資金パーティーの販売を巡り、ノルマ以上の枚数を売り上げた場合、超過分はそれぞれの議員にキックバック(環流)されていたという。政治資金収支報告書に記載されない裏金として処理されていたという。政治団体から個人への贈与ともなれば所得税の対象になるというのが大方の見方である▼むろん、税務当局への申告などしているはずもあるまい。「裏金」のゆえんだ。朝日新聞12月12日付紙面は、直近の5年間で安倍派が所属議員に環流した裏金の総額は5億円に上ると報じた。同派閥の松野一博官房長官をはじめ、「5人衆」と呼ばれる幹部全員が軒並み裏金を手にしていたとされ、進退問題に発展するのは必至とされる▼東京地検特捜部がこれまでにない陣容で捜査に乗り出している。自民党単独政権が終焉を迎えるきっかけとなった、1988年のリクルート事件に重ねる報道もある。捜査の焦点は安倍派である。凶弾に倒れた安倍晋三元首相が掲げたスローガンは「美しい日本」。その実相は、議員本人の蓄財というのであれば、あまりに国民を愚弄している。(熊)
フォトコン結果発表
取材依頼はこちら
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP