円居
2023年12月07日
大分銀行や大分トリニータの運営団体などで組織する「大分トリニータ農業プロジェクト推進協議会」が約400㌔の米を県内の子ども食堂に贈ったという、ニュースが読売新聞で報じられた。私たち建設業界でも、既報のように新成建設㈱(大分市)が今夏、支援金を寄贈するなど、子ども食堂活動を支援する動きが活発化している▼朝日新聞デジタル版(10月4日)によると、低所得の子育て世帯を対象に、子ども1人当たり5万円を支給する国の事業で、2022年度に県内で受給した子どもは2万8009人だったという。18歳未満の子どもの人数を元にした受給率は17・4%にのぼる。支給対象は児童扶養手当を受給した「ひとり親世帯」などであることを勘案すれば、県内の2割の子どもたちが貧困に直面していることになる▼この子どもたちは、家族でテーブルを囲んで食事を楽しみ、ともにいる幸福をかみしめたことがあるのだろうか、とも思う。そうした光景をいにしえ人は「円居」と呼んだ。「まどい」と読む。同じ卓に集う家族の姿を「円」の形状に例えた。「円」とは円満、平穏の象徴でもあったのだろう▼その「円」を巡って、揺れている。25年大阪・関西万博のシンボルとなる円形の大屋根を巡って、である。一周約2㌔の空中回廊になっており、総木製で日本の伝統工法でつくられるという。建設費は約344億円。問題は、半年間の万博期間の終了後はあっさり取り壊される点だ▼国会の論戦でも焦点に。当然であろう。共同通信の11月の世論調査では68%が「万博は不必要」と答えた。大屋根問題は「万博不要論」に拍車をかけそう。それにしても、である。344億円あればどれだけの貧困層の子どもたちが救われるのだろうか。政治家、官僚に「惑い」はなかったのか。(熊)