大分建設新聞

四方山

天職

2023年12月04日
 何度もここで旦那をネタに話を繰り広げてきたのだが、本人はそんな事態を露ほども知らない。新聞をわざわざ見せることもしないし、妻が不満や文句をこんな場所で、こんな形で発散しているとは夢にも思っていない。「知らぬが仏」とは、まさにこのことか▼しかし先日、ついに旦那に全容がバレてしまった。ダイニングテーブルに新聞を置いて出掛けてしまった際に、たまたま掲載日だった四方山を読んで気付かれてしまったのだ。帰宅するや否や「これは自分のことではないか」と詰め寄られた。何と言い訳しようかと目を白黒させていたのだが、予想に反して怒ってはいない様子だった。むしろ「他にどんなことを書いたのか、オチはどうしたのか」と、根掘り葉掘り訊ねてくる。どうやら自分のことが活字となり、紙面に載るということに、一種の喜びを感じているようだ▼長年マスメディアの世界にいると、取材や撮影といった作業が日常となり、新鮮さを失ってくる。まれにアーティストやタレントといった人にも出会うことがあるが、それはおおむね宣伝のためだったり、ボランティア活動の一環だったりする。そんな時に「取材なんて緊張する」といった取材未体験者に出会うと、なぜかこちらにも緊張が移り「丁寧にヒアリングせねば」といった心持ちになる。マンネリには良い刺激だ▼流れ作業や終日のデスクワークが性に合わない自分にとって、いつも新しいことに溢れているメディア業界は水に合っている。ラジオ局に勤めていた時は音、最新のヒットチャートに溺れていた。今は活字に溺れている。入札情報や追いかけるネタ、形は違えど、どちらも「最新情報」だ▼旦那も常に新しいものを追いかけるタイプなので「おい、新作はまだか」と聞いてくるようになった。逆に書きづらい。(万)
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