大分建設新聞

四方山

弱小が勝つ

2023年11月29日
 「考える野球」で夏の甲子園を制した慶応高校(神奈川)。しかし優勝校なのに今年のプロ野球ドラフト会議で指名された選手はいなかった。野球はチームプレーであり突出した能力の選手がいなくても勝てるスポーツだ▼東京に開成高校という東大進学率トップの学校がある。今夏の甲子園地方予選でシード校に勝ち4回戦まで進んだ、と評判になった。選手は勉強第一なので練習時間は極めて短く、その練習もバントや細かなサインプレーはなし。選手を指導する監督さんは、学生時代に東大野球部に在籍していた。その当時の弱小チームの練習を取り入れたという▼東京六大学で「出ると負け」の東大は、とにかく打撃だけに特化して練習したそうだ。投手は「点を取られて当然」とストライクを投げることに集中し、打者は全員力いっぱいバットを振り回した。ボールが当たれば結構飛ぶ。「東大はガンガン来るぞ」と相手を騙すように思わせ、それで甲子園経験の相手のエースを打ち崩した試合もある、というから野球は面白い▼ラグビーやサッカーは同じチームプレーでありながら、野球ほど番狂わせがない。いろいろな理由があるのだろうが、私見で言えば、扱うボールの小ささと硬さ、それを細いバットで叩くという、どこか曲芸のようなスポーツのせいではないか。プロ野球の試合で打者が一塁走者を二塁に進めようと、バントしようとして失敗するシーンを何度見たことか。当たり損ねの打球に振り回される野手。ストライクとボールの微妙な差。あらゆる場面で不確実なシーンが現れるのが野球である▼となれば東大や開成高校みたいな弱小チームも、その監督さんのようにやり方次第で勝つチャンスは大いにある。小よく大を制す。これは野球に限らず人生でも。それ行け、弱小!(石仏)
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