「あだ名」
2023年11月07日
唐突とも言える岸田文雄首相の方針転換に、与党内からも戸惑いの声が上がる。東アジア情勢の緊張感が高まる中「新たな脅威に対し、日本人の暮らしと命を守り続ける。(防衛費の大幅増額は)今に生きるわれわれの責任」と、大見得切って増税に舵を切ったはずなのに、今度は所得税や住民税の減税を打ち出した▼あまつさえ来年度から予定していた防衛費増額に伴う増税を先送りする方針を示した。思えば「われわれの責任」は、昨年末に自民党の茂木敏充幹事長が記者会見で首相の発言として紹介した。当初は「われわれ」ではなく「国民」だったが、その後修正した経緯がある▼「国民の責任」論に「命を守るのは政治家の責任」というもっともな批判が起こると、党ホームページの文言をあっさりと書き換えてしまった。同じように「われわれの責任」も軽いノリだったのかもしれない。それにしても「減税」への突然の方針転換である。2日の記者会見で「どんなふうに呼ばれても構わない」と言いながらも「増税メガネ」と揶揄されていることを気にしていたのかもしれない▼政治家にはさまざまな「あだ名」がつく。最近では、今年の流行語大賞にノミネートされた「エッフェル姉さん」。フランスでの研修中にエッフェル塔前でポーズをとった松川るい自民党参院議員のことだ▼党の要職に就いたことで、かつての「ドリル優子」の異名が再注目されたのが小渕優子同党衆院議員。政治資金規正法事件で、事務所のパソコンを電気ドリルで破壊したことにちなむ。その父、小渕恵三元首相は「凡人」とあだ名された。その前は「平成おじさん」と呼ばれたのも懐かしい。時代につれてあだ名も変わるのだろう。岸田氏も当初「検討」を連発し「検討使」と呼ばれた。今度は「減税メガネ」?(熊)