大分建設新聞

四方山

野次

2023年11月02日
 今から160年前、1863(文久3)年というのは、幕末史の中でもとりわけ波乱の年だった。長州藩が英国、フランス、米国などの連合国と戦火を交えたかと思えば、薩摩藩は英国と激突した。一方で14代将軍家茂は孝明天皇に会うため京都に出向いた。徳川将軍の上洛は229年ぶりのことであり、幕府の権威の衰退を象徴する出来事だった▼京都に入った家茂の行列を一目見ようと、大勢の群衆が静かに見守った。その行列に向かって大きな声が上がった。「よっ、征夷大将軍!」。むろん、家茂のことであり、歌舞伎役者に掛けるような口調は、からかう意図があったからだろう。声の主は、奇兵隊創始者として知られる長州藩士の高杉晋作。一目散に逃げたのは言うまでもない。命懸けのヤジだった▼時代は下がって言論の自由が保障されたはずの今日も、時に波紋を呼ぶものらしい。街頭演説に立った岸田文雄首相に浴びせたヤジの主が強制的に排除されたという。飛ばした言葉というのが「増税メガネ」。不謹慎だが思わずクスリとなってしまう▼言葉の強烈な一撃は身内からも飛び出した。開会したばかりの臨時国会。参院本会議での代表質問で、自民党の世耕弘成参院幹事長が「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待する『リーダーとしての姿』が示せていないことに尽きる」と痛烈に難じたのだ。まるで野党質問のような厳しさである▼大阪府が高齢者向けに提供している人工知能を使ったチャットサービスが話題だ。「大阪万博」について中止かどうかを問うと「中止になってしもうた」などと回答するケースが見られたと、朝日新聞が報じた。思わず「岸田政権はどうなるの?」と問いたい衝動にかられる。答えは「よっ、内閣総理大臣!」か、それとも「増税メガネ」だろうか。(熊)
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