大分建設新聞

四方山

いじめ

2023年10月31日
 未来のタカラジェンヌを養成する兵庫県宝塚市の宝塚音楽学校。2年制の学校で2年生は「本科生」、1年生は「予科生」と呼ばれ上下関係は厳格という。「予科事」と呼ばれる不文律の決まりごとが最近まであった。先輩に対しては常に、眉間にシワを寄せて口角を下げる表情で接することが求められた。「予科顔」と呼ばれていたという▼吹き出しそうになってしまうのが、先輩が乗っていると思われる阪急電車に向かって一礼するというもの。これらは長年培ってきた「美徳」とされてきた。だが、ハラスメントではないかという指摘に、2020年に廃止されたという▼100年以上の歴史を刻み、多くの人に夢を届けてきた宝塚歌劇が揺れている。周知のように団員の転落死に伴い、いじめ問題が指摘されたのが発端だ。「予科事」に代表される厳格な上下関係がそうした問題の根底にあったのか。「清く正しく美しく」をモットーにする乙女の花園で起きた問題だけに、世間の耳目を集める▼県教委は昨年度の県内小中学校、高校の不登校者数が過去最多の3285人に上ったと発表した。いじめの認知件数は前年度に比べて1115件減の9361件だったとはいえ、1000人当たりの認知件数は79・6件で全国でも5番目の高水準である。「いじめ防止対策推進法」の成立から10年。果たして効果はあったのか▼いじめ件数の発表からほどなく、県内の複数の公立中で行われた生徒会選挙で、授業で使う「教育支援アプリ」を利用した結果、生徒の投票先について教師側に筒抜けだった実態が明るみになった。そうしたアプリの機能は生徒に知らされていなかった。公正な選挙を教える教師が、その原理原則を踏みにじった格好だ。教育現場が直面するいじめ問題。原因の一端が垣間見えるようだ。(熊)
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