大分建設新聞

四方山

城で賑わい

2023年10月30日
 以前このコラムで名古屋城の復元計画を巡って市長を巻き込んだ騒動に触れた。昔の設計図通りに木造で再建するか、障がい者も楽に昇れるエレベーターを設置するか、今も議論が続いているようだ▼そんな折り、今度は近くの福岡市でも天守閣の再建運動が起きている。ご存じ大濠公園(昔の外堀)そばの福岡城、黒田52万石の巨大な城郭である。約24万平方㍍の広大な敷地に47基の櫓(ルビ:やぐら)と10棟の城門があり、中でも重文の多聞櫓は城のシンボルとなっている。それでも全国紙の報道によれば「地元は福岡のランドマークとしての天守閣がほしい」そうだ▼ところが、この城にはもともと天守閣はなかったという説もあり、反対意見の根拠になっている。しかし天守閣を支える天守台の石は現存しており賛成派の声が大きい。致命的なのは当時の城郭設計図などの史料が無いこと。この点が設計図のある名古屋城との違いだが、賛成派は現存の櫓をもとに図面は作れると意気込む▼近年、街のランドマーク的な建築物としての城造りや天守閣再建運動の声が全国的に広がっている。国の地方創生政策を受けてか、教育関係者、郷土史家など文化人だけでなく、行政や観光、建設業界も加わって街の具体的な活性化計画を策定するところもあり、地方自治体の予算の組み方にも文化財重視の傾向が見られる。地元大分でも、大友宗麟の館跡など中世当時の広範囲の遺跡の発掘調査が進んでおり、これから大規模な公園整備が始まる。地元有志で結成する親睦団体が「NHKの大河ドラマに宗麟を」と運動している噂も聞いた▼大分以外の県内各市でも城郭や城下町整備が人を呼び込む重要な観光資源になっている。この分だと日本国中に真新しいピカピカの城が群立するかも。さすがに、ちょっと考え込む。(あ)
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