大分建設新聞

四方山

上限規制と万博

2023年10月26日
 やはりというべきか、札幌市と日本五輪委員会(JOC)は、2030年冬季オリンピック・パラリンピック招致を断念した。34年大会以降に照準を移す余地を残しての決断だが、国際五輪委員会(IOC)は30年と34年の開催地を同時決定する方針で、34年の招致についても絶望的と見られている▼肝心の札幌市民の盛り上がりがもう一つという。当然だ。21年東京五輪・パラリンピックがレガシーを残すどころか、前代未聞の汚職・談合まみれの大会だったことが明らかになったというのに、当のJOCは責任の所在を明らかにしていない。しかも、大会経費が当初の7300億円から倍近い1兆4200億円に膨らんだとあっては、札幌市は内心ヒヤヒヤであろう▼それに引き換え強気なのは、25年の開催を目前に控え、建設の遅れが指摘されている大阪・関西万博の旗振り役たちである。24年春から建設業に導入される時間外労働の上限規制をめぐり、自民党の万博推進本部の会合では超法規的取り扱いを求める規制除外論が出された。「災害だと思えばいい」といった物騒な声まで上がったという▼万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。さすがに自見英子万博相は「相いれない」と火消しにやっきだが、推進本部長は党内実力者の二階俊博元幹事長が務める。万博建設工事をめぐる超法規的措置は現実味を帯びている▼「2024年問題」とも呼ばれる時間外労働の上限規制。10月18日付の東京商工リサーチのアンケート(5151社対象)によると、建設業の69・3%が導入により「マイナス」影響が出ると見ている。「稼働率の低下による利益率の悪化」を懸念する声が多い。公正公平が行政運営の大原則である。立法府が決めた法令を自ら踏みにじっては、もはや法治国家と呼べない。(熊)
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