大分建設新聞

四方山

暖簾

2023年10月10日
 人間と同じように、企業にも平均寿命があるらしい。東京商工リサーチの集計によると、2022年に倒産した企業は6428件(負債1000万円以上)。創業年がはっきりしている5649件の平均活動年数は23・3年で、前年より0・5年短くなったという。同社は「コロナ禍の影響で企業の短命化が進んだ」と総括している▼何もコロナの影響ばかりではない。芸能界では「帝国」と呼ばれるほど、強大な権勢を誇っていたジャニーズ事務所。創業者のジャニー喜多川氏による性加害問題が明るみに出て、ついに廃業に追い込まれることになった。会社としての法人登記は1975年。創業から48年で幕を下ろす▼廃業のことを俗に「暖簾をたたむ」とも言う。一方で「暖簾を守る」という言葉があるように、日本人は暖簾に特別な精神性を見いだしていた。作家、山崎豊子さんの初期代表作に、大阪の老舗商家を舞台にした『暖簾』がある。襲いかかる火災を前に、主人公がこう独白する場面がある▼「暖簾は商家の命だった。(略)それだけに生死を賭けても守らねばならなかった」。商人にとって暖簾とは命に等しい。山崎さんは、長年積み重ねてきた「信用」の象徴として暖簾を見た。その信用が失われた瞬間、暖簾を下ろさざるを得なくなる。ジャニーズの問題も同様であろう▼おかげさまで弊紙は40年の紙齢を数えることが出来た。9月26日付の特別号をご覧いただけただろうか。各界の方々から過分な言葉を頂戴した。その中に「公正公平な報道と論説により、建設産業の発展に貢献されてきました」という一文があった。まさしくこれこそが弊紙の「信用」の源泉であろう。「暖簾は磨いてこそ、初めて値打ちが出る」という。さらに新たな信用を積み重ねていくことを読者にお誓いしたい。(熊)
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