大分建設新聞

四方山

異常気象

2023年10月05日
 旧北馬城村出光地区(宇佐市出光)で9月20日、80年前に起きた山津波の犠牲者を追悼する慰霊式が開かれた。1943年のその日、台風26号による豪雨で、それこそ津波のように土砂が押し寄せる大規模な山崩れが起き、29人の命が奪われた。戦時下という時代もあって、情報統制の影響でほとんど報じられなかった▼合併で北馬城村が55年に消滅したことも加わり、これだけの災害でありながら『宇佐市史』にも掲載されず、「忘れられた災害」になっていた。自然災害のリスクが格段に高まっている中、悲劇の歴史を伝え防災意識を喚起させる目的で、出光自治区の手で「災害伝承碑」が設置、80年を経ての式典となった▼「大なるものが過ぎ行く野分かな」。高浜虚子の作品である。野分とは台風のこと。俳句では仲秋、つまりは9月の季語として使われている。9月といえば、台風シーズンというのが相場である。ところが今年は様相が違った。気象庁によると、平年だと9月には5個の台風が発生しているというが、今年はわずかに2個。統計を始めた51年以降、最小記録になった▼もちろん、記録ずくめの猛暑の影響である。台風被害にたびたび見舞われてきた本県にとってはありがたいが、異常気象の影響であることを考えると薄ら寒さを覚える。米航空宇宙局(NASA)によると、1880年の集計以来、地球は夏季としては過去最高の平均気温を記録したという▼四方を海で囲まれている日本は、海水温上昇の影響を受けやすいという。「日本から四季が消え、夏と冬の二季になる」と警告するのは、異常気象を研究する立花義裕・三重大学教授である。このありさまに「秋は夕暮れ。夕日の差して…」とつづった清少納言はどう見るだろうか。地球環境について、真剣に考える時期であろう。(熊)
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