大分建設新聞

四方山

人事

2023年10月03日
 NHK大河ドラマ「どうする家康」がいよいよ佳境を迎えている。見どころの一つは、人使いの名手と言われた徳川家康と家臣団の関係だ。織田信長、豊臣秀吉といった実力者から課せられる無理難題を、松本潤さん演じる家康が個性豊かな家臣団とともにどう乗り切っていくのか。現代のビジネスの世界にも通じる▼晩年の家康を支えた腹心の一人に土井利勝がいる。家康より30歳若く、三代の将軍に仕え幕府の基礎をつくった実力者であった。ある時、家康から家中の一人について「引き立てようと思うが、この男の評判はどうか」と問われ、「あいさつに来たことがないので知りません」と答えた▼家康は不快な表情を浮かべた。「わざわざあいさつに出向くものは、おべっか使いにすぎない。そんな者を集めたら幕府は滅びる」と叱り、こう諭した。「よくよく人の善悪能否をたずねるべし」。人材の登用にあたっては、親しいなどという情実は排し、人物そのものを見極めろ、というのである。利勝は大いに恥じたというが、わが宰相殿はどうだろうか▼第2次再改造内閣をスタートさせた岸田文雄首相。内閣改造に伴う自民党役員人事も決まった。注目を集めるのが、松川るい参院議員の副幹事長への抜てきと、杉田水脈衆院議員の環境部会長代理という要職への起用である。持論の「女性ならではの感性を発揮してもらいたい」ゆえの人事なのであろう▼しかし、である。松川氏は海外研修で訪れたパリで観光旅行のような写真をSNSに投稿し、党女性局長から更迭されたばかり。杉田氏にいたってはアイヌ民族を侮蔑するSNS投稿が人権侵犯と認定されたのは、最近の話である。2人とも安倍派の所属。最大派閥への配慮か、それとも自身の信念か。「滅び」の前兆とならないことを祈るばかりだ。(熊)
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