新法を前に
2023年09月27日
時間外労働の上限規制が、これまで猶予されてきた建設業界やトラック運送業界に対して来年4月から適用される。弊紙に中央から配信されてくる建設情報にも、管轄する国土交通省の各種調査を含めて建設業界の対策の様子が急増してきた。県内の建設業協会の会合でもこの問題をめぐる意見交換が頻繁に行われている▼実際のところ来年4月からの法適用にうまく対応できるのか。国交省がたびたび発表している調査内容では、ゼネコンなどの大手は着々と対応を進めている様子だが、業界の大半を占める中小建設会社は「分かってはいるが、どう対応すればいいのかわからない」とする声が大きい▼すでにこの上限規制問題はトラック業界を含めて社会問題化しており、先日も東京の民放テレビ局が朝のワイドショーで建設業界を大きく取り上げた。説明に立った業界関係者は「下請け、孫請けなどの中小業者の中には、この規制問題自体を知らない人も多い。対策以前の問題」と懸念する。一方で、社員に規制外残業をさせない代わりに派遣技術者を起用する会社が急増、正社員より派遣の方が高額報酬を受けるケースも出てきた▼建設業は免許・資格の世界である。改正労働基準法違反で罰則適用となれば、最悪の場合、仕事ができなくなる恐れがある。同時に深刻な人手不足や資材の高騰など現状に立ちふさがる高い壁をどう乗り越えるかという目前の試練もある。業界の長時間勤務は単純に工事現場だけの問題ではなく、行政庁への書類提出など事務に要する時間も長い。内外両面での短時間化が図られなければ、どう見ても対応は無理である▼来年4月まであと半年。トラック業界ではドライバーの絶対数不足、荷下ろしの待機問題など物流の遅れが確実視される。まさに「どうする建設業界」である。(石仏)