大分建設新聞

四方山

2023年09月15日
 竹と言えば、春になると食べたくなるタケノコ、竹取物語のかぐや姫、戦時中の竹やりを連想するというとお里が知れるが、日本の竹工芸は世界に誇る伝統工芸である。竹の生産が目立つ地域の一つ、大分県の資料によると、真竹の竹材生産量では全国1(2020年)とあって、県内では別府、竹田などで竹工芸が盛んだ▼別府市には県立竹工芸訓練センターや市の竹細工伝統産業会館があるほか、竹田市でも竹工芸家がいるなど県内各地で竹工芸は身近なものとなっている▼竹は自然素材で、古くから人々に利用されてきた。生活用具や農具、漁具、楽器などさまざまな製品が作り出されている。日本の竹の素材としての実用性に着目した偉人がいた。発明王エジソンである。電球のフィラメントに京都府南部の八幡竹を採用した。当初は、炭化させた木綿の糸をフィラメントに使用していたが、点灯時間を延ばすため6000種類もの炭化させた素材で実験を重ね、たどり着いたのが耐久性と柔軟性に優れていた八幡竹だった▼一方、竹の美しさに魅せられて伝統工芸の道を極めている人々もいる。大分県からは竹工芸の人間国宝(重要無形文化財保持者)として、初めて生野祥雲斎(1904~74年)が認定され、これまで7人(物故者を含む)が竹工芸の世界で輝いている。生野は竹細工を芸術の域まで高めた▼その生野の作品約80点を含めて300点からなる県内外の竹工芸作品が現在、11月12日までの会期で県立美術館で展示されている。展覧会のタイトルは「此君礼賛-おおいた竹ものがたり」。此君(しくん)は竹の異称で、中国の春秋時代にいた晋の文人・王子猷(おうしよう)が「一日たりともこの君なしではいられない」と竹を深く愛したという故事にちなむ。俗人にはまぶしいほどの感性だ。(ゴウ)
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