大分建設新聞

四方山

大分は人を励ます

2023年09月14日
 「鉄路よりしづけきものなし虫がなき」昭和を代表する俳人、山口誓子の一句である。にぎやかな虫の音を対置することで、列車の走らない時の鉄路の静寂さが描写されている。2017年の九州北部豪雨で不通となったJR日田彦山線。それこそ6年にわたって、鉄路は沈黙の歳月を刻んできた▼その日田―添田(福岡県添田町)間の約40㌔の区間で、バス高速輸送システム「ひこぼしライン」が開業した。レールの代わりに敷きつめられたアスファルトの上をバスが走る。ガタン、ゴトン。軌道の音が響くことはない。それでも公共交通機関の復興に、住民の表情は明るい。これから「再生」への物語が始まるのだろう▼「大分には、過去を背負った人を励まし復活させる力があるのだろうか?」。そんな一文に目が吸い寄せられた。朝日新聞9月2日付紙面の書評欄。文芸評論家の斎藤美奈子さんが連載「旅する文学」で本県を取り上げていた。耶馬溪を舞台にした菊池寛『恩讐の彼方に』などの作品が登場する▼辛口で知られる批評家だが「現代の文学の中でも、大分はしばしば救済の地として描かれる」などと、おしなべて好意的に書かれている。見出しは「過去を背負う人を励ます力」。何だか面はゆい。でも、存外そうかもしれぬ。集団指導体制に移行した自民党最大派閥の安倍派。その意思決定機関のメンバー、世耕弘成・参院幹事長のことである▼その世耕氏は先ごろ来県し、党総裁選で派閥として岸田文雄首相を支持すると明言した。世耕氏といえば首相への意欲を見せ、衆院へのくら替えがささやかれる。だが選挙区の和歌山は党重鎮の二階俊博元幹事長が押さえており簡単ではない。それにしても総裁選は来秋である。フライング気味の発言で注目を集め、大分の「励ます力」に期待した?(熊)
取材依頼はこちら
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP