大分建設新聞

四方山

デマ拡散

2023年09月05日
 9月1日といえば「防災の日」である。100年前に起きた関東大震災に由来する。だが、日本赤十字社のインターネット調査によると、回答を寄せた1200人のうち全体の半数近い49%がそのことを知らなかった。死者10万人超という空前の自然災害も、令和の世ともなれば、遠い昔話になったようだ▼その「天災」下で繰り広げられた悲劇的な「人災」については、どれほどの人が知っているのだろうか。「井戸に毒を入れた」などというデマが拡散し、おびただしい数の朝鮮人が殺害された。朝鮮人虐殺である。犠牲者数について、内閣府は2008年、震災死者数の1~数%との推計を発表した。虐殺の中心的な役割を担ったのは自警団。要は一般市民だった▼それから100年。皮肉にも「日本は海洋に汚染水を放出している」というデマが中国、そして韓国で広がる。発端は、日本政府が踏み切った福島第1原発の処理水海洋放出である。処理水といっても、微量の放射性物質トリチウムが含まれている。中国政府が「核汚染水」と呼ぶゆえんである▼それにしても、すさまじい反発である。中国は日本の海産物の輸入を全面的に禁止した。加えて、日本国内への「嫌がらせ電話」攻撃。中国各地からかけられているとみられる。中国政府の強硬姿勢が国内世論を過剰にあおり、一因となったのは確かであろう。そんな中で飛び出したのが野村哲郎農相から飛び出した「汚染水」発言である▼「時々、口が滑ってしまう」と釈明したが後の祭り。中国は「事実を言ったに過ぎない」と鬼の首を取った騒ぎようだがふと思う。「処理水は安全」と言っている東京電力のことである。事故直後のメルトダウンも認めようとしなかった東電の隠蔽体質を思えば、国際世論の厳しい反応は身から出た錆かもしれぬ。(熊)
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