値段の尺度
2023年08月31日
多くの高校生ヒーローを生み出してきた夏の甲子園だが「王子」の称号がつけられたのは、2006年に早稲田実業(東京)のエース、斎藤佑樹さんが「ハンカチ王子」と呼ばれて以来のことだろう。107年振りに優勝に輝いた慶応(神奈川)。打撃で大活躍した丸田湊斗外野手に贈られたニックネームが「美白王子」▼高校球児らしからぬ色白の好男子。肌が弱いことから日焼け止めを愛用していると公言していた。それはそれで苦労もあることだろう。日焼け止めには「ニベア」を愛用していると報じられると、発売元も喜びのコメントをスポーツ紙などに寄せた。思わず広告料に換算すれば…などと、勘ぐってしまう▼神聖な高校野球に、俗にまみれた金勘定の話題を連想してしまうとは何と不謹慎なことかと自嘲していると、読売新聞8月19日付紙面に目が奪われた。甲子園で使用されたと見られる公認球がネットのフリーマーケットで販売されているという。ファウルとなって観客席に入ったボールらしい▼付加価値を高めるためか「甲子園の土が付いています」などといった説明文が付けられ、5000~2万2000円の値が付けられていたという。観客席でたまたまキャッチしたのであれば、仕入れ価格は0円。おいしい商売のよう。甲子園の公認球のほかにも、ネットではまさかと思うようなものが商品として取り引きされている。政治家の名刺もその一つ▼興味深いのは価格設定である。毎日新聞8月16日付紙面によると、安倍晋三元首相の自民党幹事長代理時代の名刺は1万8000円。菅義偉前首相の官房長官時代の名刺は1万2000円。これに対して内閣総理大臣の肩書きの入った岸田文雄首相の名刺は1万円だった。気になるのは値段の尺度。支持率と連動とはうがち過ぎだろうか。(熊)