大分建設新聞

四方山

信用

2023年08月24日
 かつては温泉観光都市、別府の賑わいを象徴するアーケードだったという。JR別府駅南側の楠銀天街である。1953年に整備され、全長約350㍍。100を超える商店が並び、その昔「日本一のアーケード」と讃えられたとも聞く。それから70年を経て、今では人通りはまばらで、営業している店舗も数えるほど。典型的なシャッター通りである▼深刻な問題が起きている。アーケードの老朽化である。支柱は錆びつき構造物の落下の危険性が高まり、撤去が喫緊の課題として浮上しているという。と言って、管理する商店街の団体も青息吐息の状態で、費用の負担は厳しい状態。そうした中、大分合同新聞8月16日付紙面によると、一筋の光明が差し込んだようだ。別府市が国の補助金を活用して撤去を進める方向で調整中だという▼誠に不謹慎極まりないが、中古車販売では業界最大手の店舗が楠銀天街近くにあれば、頼まずしてもアーケードを撤去してくれたのではないかと、ついつい勝手な想像をしてしまった。世間を騒がせているビッグモーターである▼店舗前の街路樹や植栽を勝手に伐採していたことが社会問題化している。道路側から売り物の中古車が見通せるようにするための〝工夫〟だったという。朝日新聞記事は「草一本残すな」が社内の合言葉だったと報じた。県内でも中津市内の店舗前の県道脇に植えられていたツツジが撤去されていた。除草剤を撒いていたというから荒っぽい▼県の調査に店側は「環境整備の一環だった」と釈明しているという。切り倒したのは、樹木だけだったのか。商売の根っこにある「信用」を傷つけてしまったのではなかろうか。信用を「無形の力、無形の富」と呼んだのは松下幸之助である。「得難く失いやすい」とも嘆じた。新芽は出るのだろうか。(熊)
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