大分建設新聞

四方山

ものづくりは人づくり

2023年08月18日
 バブル景気に浮かれたころ、女性が結婚相手に求める条件として「3K」という言葉がもてはやされた。「高学歴、高収入、高身長」のことである。いかにもうわべだけが重んじられた軽佻浮薄の時代らしい。別の意味もあった。「きつい、汚い、危険」な職場として、建設業界を揶揄する言葉であった▼ところがバブル経済の崩壊後、長期低迷の時代に入ると「帰れない、厳しい、給与が安い」として、販売業などのホワイトカラーの職種を言い表す意味に変じた。そして国土交通省の呼び掛けで、建設業界総体として新3K「給与が高い、休日がある、希望がある」職場を目指す取り組みが進められている▼新しいスローガンがあることを、弊紙8月4日付紙面「この人に聞く」欄に登場いただいた利光建設工業、利光正臣社長のインタビュー記事で知った。「MJK」と呼ぶという。「儲かる、持続できる、希望が持てる」の略である。会社、従業員ともに「持続」していくというのがミソなのだろう▼ついつい「MRJ」が頭をよぎる。三菱重工業が開発に取り組んでいた国産初のジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(のちにスペースジェット)」計画のことである。同じ「M」から始まる3文字ということだけが連想の理由ではない。MJKとは違い、持続できなかったことが対比的に感じられたからである▼事業開始から15年、約1兆円の巨費を投じながらの計画断念であった。同社はジェット旅客機の開発から完全に撤退するという。「ものづくり日本」は過去の話だったのか。開発を担った事業体は解体された。失敗から学んだ知見を継承しなければ、それこそ無駄な失敗で終わってしまう。利光社長の記事の見出しは「ものづくりは人づくり」。三菱重工業首脳陣にはどう響くのか。(熊)
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