大分建設新聞

四方山

嫉妬

2023年08月16日
 NHK連続テレビ小説「らんまん」といえば、周知のように植物学者の牧野富太郎(1862~1957)の生涯を下敷きにしている。見どころの一つが学歴のない神木隆之介さん演じる主人公と、東京大植物学教室の教授陣との摩擦である。時には露骨な嫌がらせに遭遇しながらも、持ち前のバイタリティーで乗り越えていく▼牧野自身、教授陣のいじめには閉口したらしい。後年の自伝にこんなことを書き連ねている。「私は誰はばからず(研究成果を)ドシドシ雑誌に発表したので、どうも松村氏は面白くない、つまり嫉妬であろう」。松村氏とは牧野が仕えた東大教授。実名で書くぐらいだから、相当腹にすえかねていたのだろう▼人間関係の本質は「嫉妬」にあると達観していたのは、歴代首相の中で高い人気を誇る田中角栄だ。「世の中、嫉妬とそろばんだ。嫉妬はインテリほど強い」と説いた。ねたみと損得を同列に扱うのは、はなはだ乱暴な気もするが、その二つを心得れば敵を作らずに済むと田中は言う。田中も牧野同様、学歴は高等小学校卒。たたき上げならではの知恵なのだろう▼このところ躍進著しい日本維新の会を巡って永田町がかまびすしい。発端は馬場伸幸代表がネット番組で、自党を「第2自民党」と表現し、自公政権との連立も視野に入れていると示唆した発言だった。ラブコールである。即座に反応したのが公明党。山口那津男代表は「安定政権基盤は自公の組み合わせしかない」とぴしゃり▼パイは少ない人数で分けたいというホンネと同時に、勢いのある維新への嫉妬のようなものも見え隠れする。下世話なたとえだが、さながら自民党を軸にした三角関係である。維新と公明のさや当てが永田町波乱の種になりそうな予感もする中、自民の高笑いが聞こえてきそうだ。(熊)
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