トラックドライバーの現実
2023年07月31日
建設業界にも、迫りくる2024年問題に頭を抱えている会社があると思うが、運転手の時間外労働が年間960時間までに制限される物流業界も同じである。物流の停滞が懸念される中、政府は関係閣僚会議で取りまとめた施策の一つとして高速道路の中・大型車などの規制速度を80㌔から100㌔に引き上げることを盛り込んだと聞いて驚いた。速度規制を緩和すれば少しでも多く走れるだろうと考えたのだろうが、そもそも目的は時間外労働が多いから制限をするのに速度を上げさせてもっと走らせるのは本末転倒ではないか▼工場から日本全国津々浦々まで搬送ロボット、トラック、貨物列車、飛行機、船と、あらゆる物流手段を運用してきた経験からすると、規制速度を引き上げて走る距離が延びても単純にドライバーの時間外労働は減らない。トラックによる物流での効率化は、走っている時間よりも、停まっている時間をいかに短くするかだ▼私がいた倉庫にはトラックヤードが八つあり、そのヤードごとに到着する運送会社と時刻表が決められている。もちろん時刻表は厳守で、早く着いたからといって早くトラックを入れられるわけではない。荷下ろしや荷積みに30分~1時間はかかり、到着地の周囲でトラックを一時的に停めて、時間調整に苦労しているのがドライバーの現実だ▼ドライバーの時間外労働の削減には、これらの作業を軽減することを考えるべきで、出荷側と荷受け側の情報共有化、機械化、自動化が効果的だ。そのためには出荷側の荷姿の改善や情報の電子化が必要となる▼一方で、高速道路でスピードを上げて走るドライバーの負担やトラックの物理的消耗によるコストアップは影響が無いのかも気になる。仕組みを変える時は、まず現場に立ち、課題を把握することが前提だ。(リュウ)