大分建設新聞

四方山

スギ林を歩きながら考えた

2023年07月19日
 私の地元では、山々でスギの伐採が進んでいる。狭い田舎道を巨大な木材を積み上げた大型トラックが砂埃を上げて行く。まるごとハゲ山のようになっているところも目にする▼住人に誘われて山歩きをすると、その道すがら身近な自然や歴史の話を聞く。特に放置されたスギ林が自然景観を壊していることには本気で怒っている。彼は枝打ちをしないスギは売り物にもならないと嘆き、大量に伐採された風景には「これで少しは眺めも良くなった」と喜んで見守る▼2021~22年にかけての輸入木材の価格高騰もあり、建設業界は大きな打撃を受けた。帝国データバンクの23年3月までの調査によると、建設業の倒産件数が急増、3年ぶりの増加だという。22年5月には、政府が物価高騰緊急対策を閣議決定し、建設分野では国産材への転換支援に40億円の予算を計上した。県産材は、県立武道スポーツセンターや県立美術館などの大規模建築物に使用され、県民の目に触れることも多くなっている▼木材の高騰だけでなく、建設業界では高齢化、人手不足など大きな課題が山積している。各種コスト増を価格に転嫁しづらい中で、小零細規模の建設業者はどう生き残っていくか、その対策が不可欠だ▼私事で言えば、実家の敷地内に立つ6本のスギをどうするかが重要課題。樹高15㍍はあり、風よけにはなっているが…。本来、スギは苗木を植林したら5年までは年2回の下刈り、5~10年ごとに間伐が必要になるなど、建築材になるまで50~60年の歳月を要する。実家のスギは手の入れようもない状態。伐採するにもそれなりの費用がかかる▼ご先祖様は、子々孫々の「財産」にでもなればと願ったに違いない。宝の持ち腐れ風に見えるスギを眺めながら、国産材の明日について考える機会になった。(コデ)
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