大分建設新聞

四方山

最前線

2023年07月18日
 「雨垂れは三途の川」と言われる。軒下からしたたり落ちる雨垂れを「あの世」につながる「三途の川」に見立てて、家から一歩出れば、どんな災難が待ち構えているか分からない、という戒めの言葉である。九州北部を襲った豪雨災害。氾濫など大きな被害が生じた中津市の山国川を取材した同僚記者は、荒れ狂う河川に三途の川を見る思いだったという▼紙面に掲載された写真に息をのむ思いがした。濁流に削り取られる護岸。押し流された橋の欄干…。周辺の住民たちはそれこそ生きた心地がしなかったことだろう。同僚も危険を顧みることなく、よくぞここまで足を踏み入れたと思う▼だが、社員の安全を守る立場の社長からは「命を粗末にすることはあってはならない」と叱責されたらしい。同僚をかばうわけではないが、実は弊紙に掲載された写真は、全国ネットの民放ニュース番組で使われた。福岡方面の被災ばかりに注目が集まる中、県内の深刻な被災状況に全国の目を向けさせる一助になったようだ▼西日本新聞7月11日付紙面によると、日田市の6月28日から7月10日までの間の降水量は1146㍉。平年の約2倍に達する。小野、大鶴両地区は一時孤立状態に陥った。雨の降りしきる中で、大分県建設業協会日田支部は10日未明に災害対策本部を設置し、早くも寸断された市内の道路などの復旧作業に当たっている。自らも被災者だというのに、である▼残念ながら被災地における業界の取り組みが一般紙で報じられることはほとんどない。同支部の奮闘を伝える12日付弊紙記事は、河津龍治支部長のコメントを「災害最前線に立つ建設業の意気込みを語った」という言葉で締めくくっている。そうした活動を丁寧に報じていくことこそ、創刊40年を迎えた私たちの変わらぬ意気込みである。(熊)
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