大分建設新聞

四方山

名古屋城

2023年07月05日
 名古屋がもめている。金のしゃちほこで有名な名古屋城天守閣の木造復元工事を巡って、障がい者も見学できるように最上階までエレベーターを設置するか、それとも昔通りに復元するか、河村たかし市長の不適切対応もあって大騒ぎになっている▼徳川家康が築城した名古屋城は、当時の設計資料が残る稀有な城で、終戦の年に空襲で焼け鉄筋コンクリートで再建されたが、近年老朽化が著しく復元計画が持ち上がっていた。市は総額500億円の予算を付け、現在設置してあるエレベーターを廃止、当時の縄張り(設計)通りの木造天守閣を復元する方針を決めた。ところが市民説明会の場で車イスの市民から「エレベーター設置」の要望が出され、昔通りの城を求める市民と衝突。河村市長は「熱心な議論が交わされた」と発言、障がい者を無視したとして炎上騒ぎになった▼市長は陳謝を表明したが、復元計画の方法は先延ばしになったまま。さて、どうしたものか。歴史好きの城郭マニアなら、昔通りの名古屋城を再現してほしい心境だろう。一方、エレベーター無しには容易に天守に上れない障がい者の立場になれば、設置は当然になる。結論を出すのはなかなかに難しい▼ふと、数年前に訪れた姫路城を思い出した。垂直に近い木造階段を大汗かいて天守の最上階まで上ったが、この城には、エレベーターはどこにもなかった。車イス障がい者なら数人の介助者なくしては絶対に上れない城だ。最上階から見下ろす姫路の街並みや瀬戸内海の景色は素晴らしい。誰だって機会があれば一度は上ってみたい天守閣だと思う▼障がい者について姫路市はどう考えていたのか。今回の名古屋城修復計画を巡る騒ぎは、多数の健常者の前に突き出された大きな宿題となった。当時のままの城を体現したい思いは罪か。(あ)
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