大分建設新聞

四方山

角さん

2023年07月04日
 もう、いい加減に止んで欲しい。何度そう思ったことか。カレンダーが6月から7月にかわる中、県内全域が激しい雨に見舞われた。車に乗っていても、雨足の速さにワイパーが追いつかないほどだった。由布市では土砂崩れで行方不明者が出るなど豪雨による被害が出た。読者の皆さまは大丈夫だったろうか▼雨のシーズンになると、決まって大規模災害が起きるようになってきた。そのたびに「異常気象」という言葉が使われるが、今や異常気象が当たり前になろうとしている。そうした気象による災害は土木工事で封じ込められると考えた政治家がいた。根強い人気のある田中角栄である▼出身地の新潟は豪雪地帯として知られる。戦後間もないころ、政治家を志した角栄は、豪雪の原因と考えられた群馬県境と間に屹立する三国峠を指さして「切り崩せば雪は降らない。その土砂で海を埋め立てれば佐渡島も陸続きになる」と演説したという。とはいえ、生やさしい話ではない。そして、角栄が目を付けたのはトンネルだった▼トンネルなどの整備が、移動の時間を劇的に短縮し、都市への一極集中から分散型の国土に生まれ変わるインフラと信じた。少子化など縮小社会を迎えた中、ほとんど見向きもされなくなったが、自然災害が大型化する中、避難路確保などの上からも交通網整備の重要性は高まってるようでもある▼熊本県との県境に建設中だった滝室坂トンネルが10年がかりの工事の末に貫通した。熊本県とのアクセスは劇的に改善される。そうした中で佐藤樹一郎知事が愛媛県と海底トンネルで結ぶ構想を掲げる。実現までは簡単な道のりではあるまい。だがその意気は「俺の目標は、年寄りも孫も一緒に、楽しく暮らせる世の中をつくることなんだ」という角栄の言葉に共振するようだ。(熊)
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