大分建設新聞

四方山

まさか

2023年06月27日
 「財界の青年将校」と呼ばれたかと思えば「経済参謀」、さらには「財界の重鎮」。その多彩な異名が不世出の経済人であったことを物語っている。33歳で起業した「ウシオ電機」を世界的な企業に育て上げ、元経済同友会代表幹事として政財界で重きをなした牛尾治朗さんが他界した。92歳の大往生だった▼言葉の使い手であり教養人であった。こんな言葉を残した。「人は誠意を尽くせば5~6割は返ってきます。人生…信じるに足りますよ」。人間とはどこかで、応分の見返りを期待してしまうものだが、半分で良しとする。自身の経営者としての経験に裏打ちされた言葉なのだろう。ビジネスの世界だけでなく、処世の心得としても心に響く▼岸田文雄首相が出身校の早稲田大で先ごろ講演をした。母校という気安さもあったのだろう。「模範的な学生でなかった」と笑いを誘いながら、こんな言葉で締めくくったという。「人生の『まさか』を前向きに捉えて、お互い明るく生きていこう」▼牛尾さんのそれに比べて「深み」がなどと言うつもりはない。下落傾向の内閣支持率を気にするあまりに、自らを鼓舞する言葉が思わず漏れたのかもしれぬ。そんな首相の楽観主義的な言葉に勇気づけられるとしたら、あの人かも…と、思い浮かんだのが苦虫をかみつぶしたような表情の立憲民主党県連の吉田忠智代表だ▼次期衆院選の大分3区の公認候補である元県職員の公認内定を取り消した。理由について「諸般の事情」としているが、機関決定しながらわずか10日での撤回である。県民の理解は得られるのであろうか。自身の参院補選での落選に加え、地方選での苦戦と、同党にとっては茨の道が続く。それこそ「明るく」いきたいところだろう。だが「まさか」でなさそうなだけに、同党の苦悩は深い。(熊)
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