大分建設新聞

四方山

落度だらけ

2023年06月23日
 幽霊の正体見たり枯れ尾花。お化けだと思っていたら実は枯れススキだった―という句を地で行くような騒動だった。安倍晋三元首相の銃撃事件で殺人などの罪で起訴された被告の公判前整理手続きが中止に追い込まれた。公判準備が進められている、奈良地裁に届いた段ボール箱が原因だった▼地裁の金属検査機の反応が確認され、庁舎内の職員、来庁者は全員避難する騒ぎとなった。県警の爆発物処理班が段ボールを調べたところ、中から出て来たのは被告の減刑を嘆願する署名簿の束。被告支援者である送り主は、ホチキスなどは使っていないと証言し、なぜ検査機が反応したのかは不明という▼笑うつもりは毛頭ない。未曽有の政治テロだっただけに慎重を期すのは当然だ。では、こちらの方はどうなのか。数々の問題点が指摘されているマイナンバー制度である。この1年間で5700万枚から9200万枚と、急速に普及したが、トラブルも急増している▼朝日新聞の13日付紙面によると、普及の呼び水となったマイナポイントの誤付与は173件を数える。別人のマイナンバーに公金受取口座が誤って登録されたケースは748件に上る。深刻なのは国が強力に推し進めている健康保険証との一体化をめぐる問題である。マイナ保険証に未対応の医療機関などでは「無保険」扱いされて10割負担を求められるケースが533件もあった。対応できる医療機関は7割という▼医療機関の受け入れ態勢が整っていないというのに、国は来年秋には現行の健康保険証をマイナに統一するという。思い出されるのが「消えた年金」問題である。2007年に約5000万件の記録漏れが発覚し、年金制度への信頼を失墜させ、これが発火点となって民主党政権に交代した。政府に警告音は届いているのだろうか。(熊)
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