大分建設新聞

四方山

田んぼ機能の発見

2023年06月16日
 今年も、梅雨半ばに差し掛かり、朝から湿度が高くジメジメした毎日だ。通勤途中の川を見ると徐々にではあるが水量が増しているように思う。特に夕方は、ウシ(食用)ガエルが「ウオーン、ウオーン」と大きな声で盛んに鳴いているが、雨の音を打ち消す声の大きさは、川の生物環境を仕切っているようだ▼毎年、頻発する大水害で盛んに言われるようになったのが「流域治水」だ。雨水が河川に流入する上流地域(集水域)から、河川などの氾濫により浸水が想定される下流地域(氾濫域)にわたる流域で、人々が協力して水害対策を行う考え方だ。いわゆる流域全体が一体となって氾濫を防ぐ対策をとり、被害を減らし早期復旧・復興対策を進める―という▼その一環で、大分県が推進する「田んぼダム」がある。2002年に新潟県村上市が全国に先駆けて始めた取り組みで、水田の貯水機能を生かして河川氾濫を少しでも抑制しようとするもの。近年、全国各地で注目されている。県は、21年度から杵築市や宇佐市、中津市、九重町など県内9地区を対象に田んぼダムの実証実験を行っている。24年度から本格的に取り組むようだ▼農業の担い手不足が深刻な中、特に河川上流域では耕作放棄地が増えているのは言うまでもない。高齢化する農家では、田んぼダムをほとんど知らないのが現状だ。「田んぼ=米作り」以外で田んぼ機能を口にするのは「ジャンボタニシがいる」「ドジョウがいない」「ホタルが飛ぶ」「マムシを捕った」など自然に関する事がほとんど。農家間との会話でも水田が水害を抑制する機能があることは聞いたことがない▼これから7月にかけて梅雨本番。減災、温暖化抑制など今まで発見できなかった田んぼ機能が見えてきた。下流に住む私は農家に感謝して水害に備えたい。(勇)
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