大分建設新聞

四方山

憧れの芽

2023年06月14日
 水の入ったワイングラスの縁を、濡らした指先でゆっくりなぞると音が鳴りだすのをご存じだろうか。まるでヒーリング音のような不思議な音は、グラスの中に入れる水の量で音が変わる。量が多いと低音、少ないと高音だ。薄いグラスの方が良い音で鳴るらしい。楽器として使用されることもあり「グラスハープ」と呼ばれている▼先日初めて知り、何とも不思議で幻想的な音に知識欲がうずいた。どのような原理で音が鳴るのか、誰が最初に見つけたのかなど、一通り調べてみる。久しぶりの科学実験のような驚きと発見に、子どもの頃に体験したような遊びの思い出がよみがえってきた▼一つは、みかん果汁で絵を描き、乾かしてからストーブで炙り、絵を浮き出させるもの。何を描いているのかが分からない紙を友達同士で交換し、家で炙って秘密の手紙のように扱うのが楽しかった。もう一つはコップに水を半分ちょっと入れ、官製はがきで蓋をしてゆっくりひっくり返すもの。不思議と手を離しても、はがきもコップの水も落ちない。初めて見たときは手品かと思って目を丸くした▼「すごい」と思った経験や発見は、記憶にも心にも鮮やかに残る。そしてそれが憧れになり、夢になり、希望になる。担い手不足が叫ばれる業界では、子どもたちにこの憧れの芽を植え付けていく必要がある。さて、自分が将来の夢を具体的に描き出したのは、何歳の時だっただろうか、思い出してほしい。この「憧れの芽」の植栽作業は、その年齢よりも前のタイミングで行うのがベストなのだ▼出前授業の取材に行くと、いつもと違う授業にはしゃぐ、静かに向き合う、グループをまとめる児童と十人十色だ。この中に将来の業界を担う児童がいるかもしれない―そう思うと、シャッターを押す指にも力が入る。(万)
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