大分建設新聞

四方山

卒寿

2023年06月13日
 学生時代のころ「卒寿」と聞いて、寿命を卒業する意味かと思い込んでいた。後から、「卒」の異体字である「卆」を分解すると、「九」と「十」になることから、90歳の長寿の祝いの言葉として使われるようになったと知り、大いに恥じたものだ。爆笑コントで一時代を築いたザ・ドリフターズの高木ブーさんが卒寿を迎えた▼それを記念して自叙伝『アロハ 90歳の僕』(小学館)が出版された。「先頭じゃなくていいんだよ」のキャッチコピーにひかれて手に取った。失礼ながら志村けんさんをはじめとする個性的な他の4人のメンバーに比べて地味で「何もしない人」というイメージだった▼高木さん自身「ウケないことが存在意義」と自認している。自分がウケるようなことをしたら、志村さんらが笑いを誘う芸をしても、コント芸としての面白みは半減する、とも言っている。引き立て役に徹していたのだろう。加藤茶さんを除く他のメンバーが他界していく中で、ウクレレミュージシャンとして現役でもある高木さんの今には、いぶし銀のような輝きがある▼対照的に、永田町においてギラギラ感で存在感を増しているのが森喜朗元首相。御年85歳。首相在任は2000年4月からわずか1年。「日本は神の国」など失言を繰り返し、あっという間にその座から転落。12年には政界を引退したはずだった。だが、本領を発揮するのは「それから」である▼憲政史上最長の安倍晋三政権の誕生に当たっては、キングメーカーとしてひと役買った。安倍氏の急死後、トップ不在の「安倍派」にあっては、オーナー然として振る舞い、実質「森派」ともささやかれている。若手議員から頼られているのが元気の秘訣らしい。それともう一つ。数々の失言や東京五輪をめぐる醜聞にもめげない「鈍感力」のようだ。(熊)
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