大分建設新聞

四方山

最古の石橋が伝える

2023年05月25日
 大分県内では、加工しやすい石材が手に入りやすく、また、断崖となって自然に露出している地形的な特徴から、岩に仏を彫り込んだ磨崖仏、石塔や石橋など多くの石の文化遺産が昔から大切に保存され、後世に伝えている。地域にしかない資源を生かして繁栄した地方独特の文化を県民として守る義務がある▼その代表的な文化遺産の一つに「石橋」がある。石橋は、江戸、明治、大正、昭和の各時代に人の往来や生活に必要なものとして多くが建設された。石材の多くは加工しやすい灰色の阿蘇凝灰岩が使用されており、県内では約500基が造られているという。その数は全国一だ。古いものは橋長が短く、新しいほど長く造られ巨大化している傾向がある(河川の幅にもよるので一概には言えないが)▼先日、3年ぶりに日田市高井町の内河野川に架かる「筏場目鏡橋」に立ち寄った。2012年7月4日の九州北部豪雨で被災した石橋は、アーチ部の輪石を残した姿だったが、20年7月6~7日の九州豪雨で全て流失したことが確認された。1806(文化3)年に築造され県内で最古の石橋だっただけに残念でならない。県は、2021年3月2日、有形文化財指定を解除した▼日田市によると、度重なる水害で流された筏場目鏡橋の石材は、幸いにも引き上げられ保存されている。市は引き上げた石材をどのように保存、活用するか地元の意見を聞きながら検討していくとしている。文献から伺うことのできる日田郡竹田村の石工「久治」と「五郎吉」ほか延べ400人が建設した歴史を残してほしいものだ▼県内には立派な石橋が点在する。それは文化財に指定されていないとしても景観は最高だ。今後は、災害後に復元できるよう石位置のデータ化をする必要がある。筏場目鏡橋は最新技術に期待している。(勇)
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