大分建設新聞

四方山

G7サミット

2023年05月23日
 田中絹代(1909~77)と聞いても、令和の時代、ピンとくる人はそう多くはあるまい。映画女優。それも「大」がつくほどの名優だった。メロドラマの傑作「愛染かつら」(38)をはじめ、サイレント作品から戦後にかけて生涯に300本近くの映画に出演した▼女流映画監督のはしりでもあり、監督作品も6本を数える。昨年、米ニューヨークで特集上映会が開かれるなど、海外での評価の機運が高まり、それが逆輸入される形で日本でも監督としての田中絹代に注目が集まる。そんな彼女は終戦間もないころ「アメション女優」などと揶揄された▼親善大使として訪米したまではよかったが、帰国の第一声が「ハロー」。おまけに投げキッスを繰り出したことから、短期滞在なのに米国かぶれしたと猛バッシングを浴びた。「アメション」とは、手洗いに行った程度の訪問なのに、といった侮蔑の意味が込められている▼米大統領として初めて広島を訪れたのは2016年のオバマ氏。当時、大きく報じられたが、原爆資料館の滞在時間はわずかに10分。それで悲劇の実相が…とも思い、想起したのがアメション女優のエピソードだった。だが、今回は何かが違っていた。広島で開かれたG7サミットである。バイデン米大統領をはじめ7カ国の首脳が40分にわたって資料館を見学した▼加えて核保有国の米、英、仏を含めた7カ国の首脳がそろって慰霊碑に献花したことは、反核のメッセージとして意味を持つだろう。そして、ロシアから核の脅しを受けているウクライナのゼレンスキー大統領も広島入りした。これほど世界の目を集めたG7は近年なかった。いつもは感情を表に出さない岸田文雄首相も心なしか自信にあふれているよう。心中は解散総選挙の時期…というのは永田町雀の旬の話題とか。(熊)
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