大分建設新聞

四方山

タイム誌

2023年05月18日
 岸田文雄首相が「世界の顔」になった。国際政治に影響力を持つ米誌「タイム」(電子版)の表紙を飾ったのだ。「検討します」の連発で、野党からは「遣唐使」ならぬ「検討使」と皮肉られたりしているが、なかなかどうして、立派なものだと思ってしまう▼同誌の表紙に初めて日本人が登場したのは、日露戦争での英雄、日本海軍の東郷平八郎元帥で、1926年のことだ。以来、大リーガーの大谷翔平選手まで36人の日本人が表紙に取り上げられた。一番多いのは6回を数える昭和天皇。戦後の首相では、わずかに鳩山一郎、岸信介、佐藤栄作の3氏だけである。「大勲位」を称した中曽根康弘氏や、憲政史上最長の政権を担った安倍晋三氏の名前はない▼表紙になった鳩山氏は日ソ国交回復を実現し、岸氏は国内に大混乱を生じさせたとはいえ、日米の安全保障関係を強固なものにした。佐藤氏といえば、沖縄復帰にノーベル平和賞の受賞である。そして岸田氏は…とくると、正直、答えに窮してしまうのだ▼19日から広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)を目前に控えたタイミングである。外務省が働き掛けたのであろうことは想像がつく。それにしても普段見たことのない、歌舞伎役者ふうのポーズを決める岸田氏の写真からは、力強いリーダーシップのようなオーラすら感じられる▼好事魔多し。表紙の見出しは「自国を真の軍事大国化にすることを望んでいる」とあったことから、政府が抗議して記事の見出しを書き換えさせる一幕もあった。けれども、GDP比1%に収めていた防衛費について岸田政権は、2027年度には2%に増額する方針を決めるなど、防衛力の大幅強化に舵を切る。国内メディアと違って、忖度なく付けたのがこの見出しだったのではとも思えてくるのだ。(熊)
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