大分建設新聞

四方山

紙の新聞

2023年05月17日
 西日本新聞社(福岡)が発行していた西日本スポーツ新聞が今年3月31日付をもって廃刊した。紙面報道68年、これからはデジタル報道に転換する。野球ファンなら昔の西鉄ライオンズ、現在のソフトバンクホークスの機関紙的な思いを抱いてきた新聞であろう▼筆者もシーズン中はほぼ毎日西スポの無料ウェブを開いてタカ情報に目を通していた。4月に入り突然タカ情報が消えた。まさか西スポが廃刊したなどとは夢にも思わない。しばらくネットで捜しまくり、事実を知り力が抜けた。矛盾に満ちた話だが、毎日ネットで情報収集しながら紙の廃刊を嘆いたのである▼猛スピードで開発進化するデジタル端末の普及により、わが国はもちろん世界中の新聞が紙からデジタルへ移行しつつある。全国紙の報道によれば、アメリカの地方紙の3割が広告減で廃刊、休刊に追い込まれ、地方紙そのものがなくなった町が続出しているという▼テレビで世界のニュースを知っても自分の町の出来事は知らない、という笑えない現実が発生しているのだ。しかもその「空地」に自己利益のみを追求するネットメディアが入り込み、都合のいい情報だけを提供する。トランプ岩盤支持層みたいな誘導を目論んでいるそうだ。他国ごとではなく、わが国の近未来かもしれないと思うとうすら寒くなる…と、まあ、ネット恨み節みたいな言葉を並べてみたけれど、裏返せば紙の新聞へのどうしようもない未練かもしれない。きっとそうなのだろう▼朝、朝刊を手にした時の紙の匂いや、一面トップの大見出しのインパクトはネットでは味わえない。好きな識者のオピニオン記事を読むときのワクワク感も格別だ。紙の新聞の衰退傾向は残念ながら避けられないが、しかし消えることはあるまい。しばし西スポの冥福を祈ろう。(あ)
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