できるかな
2023年05月16日
「ノッポさん」の愛称は誰もが知っていた。器用にはさみを操り、牛乳パックがまたたく間に動物や乗り物に変わっていく。それも、ひと言もしゃべることなく、身振りと手振りだけで工作の面白さを伝えてくれた▼1990年までのおよそ四半世紀にわたってNHK教育テレビ「できるかな」などに出演し、子どもたちの人気を集めた俳優の高見のっぽさんの訃報が届いた。きのうのことも忘れてしまうのに、優しげなノッポさんの写真をみているだけで、幼少期のころの懐かしい記憶が蘇ってくる▼ノッポさんといえば、その傍らには「ゴン太くん」というかわいい着ぐるみのキャラクターがいた。そして、あの歌声。「♪でっきるかな、でっきるかな、ハテハテフム~」という、ノッポさんのテーマソングである。世の中を見渡せば、いまの時代にぴったりのエールのように響く▼新型コロナウイルスが季節性インフルエンザと同じ扱いの「5類」に移行した5月8日を期して、私たちの生活はコロナ前に戻ろうとしている。多くの飲食店は通常営業になり、街中もにぎわいが戻ってきた感じもする。マスクをしないひとの姿も見るようになった。これからは、マスクをするかしないかも含めて、感染対策は個人の判断に委ねられる▼だが、忘れてならないのは、まだ「アフターコロナ」の段階ではないということだ。県の感染者集計は同日をもって打ち切られたが、最後の発表でも医療機関でのクラスター(集団感染)の発生が報じられた。専門家からは新たな感染再拡大の懸念を指摘する声も上がる。4年目を迎え「ウィズコロナ」の社会が築けるか、私たちが問われている。「アッ、できた」。そんな声が一日も早く聞きたい。(熊)