大分建設新聞

四方山

新しい知事

2023年05月09日
 佐藤樹一郎知事による県政がスタートした。「県民の幸せのための取り組みを進めたい」という、簡明な決意表明は清心に感じられた。新知事が重要課題に掲げるのは、人口減少対策だ。1955年に約128万人を数えたのをピークに、110万人ほどに減少している▼本県だけの問題ではない。先ごろ、国立社会保障・人口問題研究所が報じた「将来推計人口」は衝撃的だった。現在の1億2600万人規模の人口が2056年には1億人を割り込み、2070年には今より3割減の8700万人まで減少するという。急カーブの減り具合は、まるでつるべ落としのよう▼より深刻なのが人口構成だ。推計上、65歳以上の高齢者が50年後には、現在の3割から4割にまで跳ね上がるという。一方で、15歳から64歳のいわゆる「生産年齢人口」は5割程度になる。とてもではないが、いまの経済規模を持続させることはできない。社会保障制度は崩壊に瀕するだろう。ただ利点もあるらしい。環境負荷の低減だという。皮肉に響く▼国は少子化対策に躍起だ。だが、そのような事態の到来は以前から分かっていたはずだ。にもかかわらず対策を講じてこなかったのは、政治の怠慢にほかならない。だが、その言葉はこだまのように返ってくる。政治家を選んでいるのは、ほかならぬ私たちだからだ▼20年ぶりに県政の舵取り役を決める戦いとなった知事選の投票率は過去最低の前回をわずかに上回る51%にとどまった。全国的にも注目された参院補選にいたっては過去最低の42%。半数の有権者が権利を放棄している現実をどう考えればいいのか。先人のおびただしい血と汗で、いまある民主主義社会を築いてきた。投票は「権利」であると同時に「義務」と考える時代ではないか。ふと、そんなことを思うのだ。(熊)
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