大分建設新聞

四方山

ダルビッシュと働き方改革

2023年05月08日
 3月に開かれたWBCで侍ジャパンが優勝できたのは、チームを一つにまとめることを担ったダルビッシュ有投手の存在が大きい。しかしながらダルビッシュ自身は侍ジャパンの一員として呼ばれるとは思っていなかったという。ところが栗山英樹監督が渡米して、日本が優勝するためにはダルビッシュの影響力が必要だとチームへの参加を促した。本人は出場を決めるまで大きな葛藤に苦しんだそうだ▼彼は、オフシーズンは父親として妻とフィフティフィフティで子育てに取り組んでおり、栗山オファーがあったのは今年初め。第5子が誕生したばかりの時期。子育てから自分が抜けてしまうと妻の不安などにつながるから、招へいされても応じられないと考え、大きな葛藤が生まれた▼結果的には家族は来られなかったが「みんな一緒に来ればいい」という栗山監督の言葉が決断を促すことになった。そして、難しい調整を覚悟の上でメジャー組からただ一人合宿から参加し、侍ジャパンの優勝に大きく貢献した▼一般のサラリーマンの世界でも単身赴任は家族を分断し、子育てを担う方に一方的な負担を強いる。少し前までは子育てに参画する男性が多くなかったので、男性の単身赴任で女性の負担はそれほど変わらなかったかもしれないが、男性が子育ての一部を担うようになった今では、女性の負担は増えるし、男性は心の重荷を背負う▼これからは単身赴任や転勤、出向そのものを断るケースが増えることも予測できる。前職では、半年に一度の面接で転勤のできる範囲を確認し、すでに効率的な人事異動に取り組んでいた。勤務地の選択を認める人事が業績に影響しない組織づくり。そんな時代が来ている。働き方改革という言葉をよく耳にするようになった日本社会に、ダルビッシュは貴重な一石を投じた。(リュウ)
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