大分建設新聞

四方山

誠意を最優先に

2023年05月01日
 43万円が入った財布を拾って警察に届け出たのに謝礼がないとして、大阪市に住む70歳の男性が、報労金の支払いを求めて大阪簡裁に提訴し、落とし主が7万円を支払うことで和解が成立した。そんな記事が少し前に報道された。同市の歩道で財布を拾い警察署に届け、財布は、その日のうちに落とし主の50歳の自営業の男性に返還されたという▼しかし、落とし主から届けた人に連絡はなく、届けた人が電話をすると、落とし主は礼も言わずに「忙しい」と切り、その後は届けた人の電話に出ず、ショートメッセージにも返信しなかったという。結局、届けた人が提訴し、第1回口頭弁論で落とし主が報労金を支払う意思を示し、提訴した額を7万円に減額した上で双方が合意した▼この報道を見て、自分の経験を思い出した。ある夜、帰り道でパンパンな財布を拾った。免許証や現金、カードなどが入っていたので、そのまま警察署に届けた。所定の手続きが終わると、警察官から「お礼を求めますか」と問われた▼私はお礼をもらう気は無かったので「お礼は不要です。名前も伏せておいて下さい」とお願いした。警察官はホッとしたように「良かった。最近は落とし主に届けると、もっとたくさん入っていたと言うクレームでもめることがあるんです。まったくお礼どころではないんです」と話した。拾ったまま届けたのに不足していると言われたら、たまったもんじゃない▼ケースは違うが、いずれも落とし主の誠意が見えない話だ。忙しいと誠意を示すことが後回しになることもあるだろうが、言い方や対応の仕方を誤ると、ネットだけでなく現実でも炎上しかねない。「まったくもって世知辛い世の中だ」と、つぶやきたい気持ちは分かるが、スマートな対応をしなければ利益が吹っ飛ぶ時代なのだ。(リュウ)
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