大分建設新聞

四方山

戦い

2023年04月24日
 与野党が四つに組んだ激戦だった。全国から注目された参院大分選挙区の補欠選挙。自民党総裁の岸田文雄首相が2回、立憲民主党の泉健太代表が4回、大分入りしててこ入れを図った。勝利の女神がほほえんだのは、自民党の新人、白坂亜紀さんだった▼戦いといえば、ビジネスの世界も同様である。かつて流通業界にあって、チェーンストアという革命を起こしたダイエーグループを率いる中内功氏と、し烈な戦いを演じたイトーヨーカ堂創業者でセブン&アイ・ホールディングス(HD)名誉会長の伊藤雅俊氏が先ごろ亡くなった。享年98。相前後して、同HDの売上高が日本の小売業としては史上初めて10兆円を超えたと報じられた。名実ともに大往生であった▼名経営者としての誉れは高かった。日本経済新聞は「『誠実』貫き巨大流通へ」の見出しを立てて逝去を惜しんだが、なるほどそのビジネスの道のりは「誠実」という言葉がぴたりとはまる。商売の基本は「信用」であり、その担保は金ではなく、経営者の誠実さ、まじめさである、と説いた▼わずか2坪の洋品店が出発点だったことを誇りとし、好んで「商人」という言葉を使った。「堅実」を旨とし、バブル時代にダイエーが不動産投資に走るのを尻目に、本業に集中した。中内氏と決定的に違ったのは後継者選びである。身内の情愛を断ち切れなかった中内氏に対して、企業の存続を第一に考えた伊藤氏は私情を排した▼自ら筆を執った「商人の道」という人生訓がある。「商人は孤独を生甲斐にしなければならぬ(略)我が歩む処そのものが道である/他人の道は自分の道でないと云う事が商人の道である」。誠実一辺倒ではなく、己に厳しかった経営者像が浮かび上がる。その言葉は建設業に生きる私たちにとっても道しるべとなろう。(熊)
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