大分建設新聞

四方山

新知事

2023年04月11日
 オウムから動物語を習い動物たちと交流を深めながら冒険する名医ドリトル先生の物語は、世界中の子どもたちに読み継がれている。イヌはもちろん、ゾウやライオンなどとも自在に話をするドリトル先生は、20世紀初頭に米国で活躍した作家、ヒュー・ロフティングの想像の産物だ。その名医と重ねて語られ、「ムツゴロウ」の愛称で知られた作家、畑正憲さんが87歳で亡くなった▼幼少期から少年期を日田市で過ごした。猛獣であろうと「ようし、よしよし」と声を掛けながら動物と戯れる姿はテレビで放映され人気を呼んだ。ライオンに中指を食いちぎられたこともあった。その時も慌てることなく「おいしかったか?」と問い掛けたという。そうしたエピソードの一つ一つが多くの人に驚きと元気を与えてくれた▼畑さんが「異才」ならば、先ごろ他界した音楽家の坂本龍一さんは、理知的な雰囲気も含めて「天才」という言葉がはまる。1980年代、電子音を主体にしたテクノポップで音楽シーンを一新させたかと思えば「戦場のメリークリスマス」など手掛けた映画音楽の美しい旋律は世界中の人たちを魅了し続ける▼坂本さんの活動は音楽にとどまらなかった。広く社会問題にも関心を寄せメッセージを発信してきた。東日本大震災の被災地に足を運び続けピアノを弾いた。被災者には「ようし、よしよし」の励ましとして響いたであろう。事務所は訃報を伝える文面に、坂本氏が好んだ「芸術は長く、人生は短し」の言葉を添えた▼新たな県知事に「広瀬県政の継承と発展」を掲げた前大分市長の佐藤樹一郎氏(65)が選ばれた。「芸術は…」の言葉は何も人生のはかなさを嘆いているわけでない。芸術の永遠性を称えている。政治、県土づくりもまた同じであろう。新知事の手腕を期待したい。(熊)
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