大分建設新聞

四方山

メッセージ

2023年04月06日
 しばしば大水害に見舞われた竹田地方。玉来川、稲葉川の氾濫で1982年には7人、90年には5人もの尊い命が失われた。地域の安全を確保するため計画された玉来ダムが完成し、建設事務所はその役割を終えて3月31日をもって閉所された。最後の所長である梶原修治さんからの寄稿が3月25日付の弊紙に掲載された▼90年の竹田大水害の折り、玖珠土木事務所に勤務する中で「何か役に立ちたい」と応援に志願しながら実現しなかったこと、そして玉来ダムの建設を通して、その願いがようやくかなったという心境でいることが丁寧に書かれていた。県民への奉仕者たらんとしての決意と、誇りが真っすぐなメッセージとして読む者の心に響く▼それに引き換え大丈夫だろうかと思ったのが、先ごろ戦火のウクライナを電撃訪問した岸田文雄首相だ。みやげに携えたのは、地元・広島名物の「必勝しゃもじ」。「お気楽すぎる」(日本維新の会)などと批判が巻き起こった▼必勝しゃもじは「飯(召し)とる」という駄じゃれが起源。パン食文化のウクライナの人たちに通じるかどうかという問題以前に、祖国存亡の戦いに直面しているウクライナに、不謹慎だったのではという声が上がる。岸田氏の頭にあったのは、日本国のためという信念ではなく、選挙区向けのパフォーマンスだったのではないか▼中国の駐日大使が2月、離任のあいさつに訪れたいという申し出を、岸田氏は拒絶していたと一斉に報じられた。しゃもじから国民の目をそらし、強い指導者像をアピールするため、官邸サイドが意図的にリークしたようなタイミングである。時を同じくして、日本人ビジネスマンが中国で拘束された。面子を重んじる国である。報復であろう。果たして岸田氏は覚悟の上のメッセージだったのか。(熊)
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