大分建設新聞

四方山

反省だけなら、サルでもできる

2023年03月31日
 東日本大震災から12年が過ぎた。被害の甚大さを知る人たちは風化を恐れ継承に取り組んでいる。大きな揺れだけでなく何もかも飲み込んでしまった津波の非情もさることながら、やはり、終わりの見えない原発の廃炉が重くのしかかっている▼東日本大震災の継承に困難を感じる人たちがいる一方で、ロシアのウクライナ侵攻による世界のエネルギー問題を後押しに、政府は原則40年と規定されている原発の運転期間を、停止していた期間を除外して60年を超える運転延長を可能にする方針を示し、今の国会で原子炉等規制法や電気事業法などの改正を目指している。これは原発の運転期間に関する決定権を原子力規制委員会から、原子力を利用する立場の経済産業省に移すことになる▼国民にとって生活を圧迫する電気料金も喜ばしくないが、原発の60年超運転を可能にする新たな規制制度を巡る委員会で、原発回帰を急ぐ政府のスケジュールありきで委員5人のうち1人が反対したまま多数決で押し切って出した結論には疑念を抱く▼福島の教訓を生かせぬままの動きに「反省だけなら、サルでもできる」という30年前の大鵬薬品のチオビタドリンクのCMを思い出す。また、老体に鞭打って60歳を過ぎて働く身としては、原発も60年以上働かされるのかと同情もする▼原子力政策に携わってきた九州大学の故吉岡斉先生が残した約10万点の文書が出てきた。公式議事録にはないが、原子力政策の内幕を全て明らかにした内容になっているという。百何十年も続く廃炉が本当に合理的なのか、福島を忘れてはいないかと、残された文書が語りかけているそうだが、政府から出てくる文書は、黒塗りだったり、当時の大臣が捏造だと言ったりする。一体われわれは何を信じて投票すれば、安全安心で安価な電気を得られるのか。(リュウ)
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