大分建設新聞

四方山

2023年03月23日
 神棚、仏壇にお供えし、正月には初詣に行き、お盆はお墓でご先祖さまに感謝の気持ちを伝える。手を合わせると日々のいらだちも落ち着くものだ。野球ファンなら「神さま・仏さま・稲尾さま」、今なら最年少で三冠王に輝いた侍ジャパンの「村上(神)さま」と唱える人も多いだろう。硬軟とりまぜ暮らしに祈りは息づいている▼そんな祈りの先にある「神」を科学的に描いてみせたのが、SF映画の名作「2001年宇宙の旅」だ。道具を使うことを覚えたサルが骨を投げ上げた先に宇宙が広がる演出は秀逸だった。月で見つかる真っ黒い石板。「モノリス」と名付けられたそれが何なのか人類にはわからない。次作「2010年」で増殖したモノリスで質量が増えた木星が「第二の太陽」となり、数千年後、衛星エウロパに生命が芽生える▼ライターで火をつける様を縄文人が見たら、馬しか知らない世に時速270㌔で新幹線が走ったら、それは神の仕業に見えるかもしれない。人知を超えた技術を目の当たりにしたとき、人は神の存在を感じる。モノリスは原作者の故アーサー・C・クラークが試みた科学的な神へのアプローチだったと思える▼原爆は一瞬にして広島と長崎の人々を焼き尽くした。これは神ならぬ悪魔の技術か。映画「スタートレック4」で核分裂の技術を「火遊び」と表現した。スリーマイル島、チェルノブイリ、福島と事故が起きた原発の技術は未来の人にはどう映るだろう▼ドラえもんのタイムマシやどこでもドアは夢あふれる神の技か。バベルの塔の神話では、天に届く塔をつくろうとして神に壊されてしまう。超高層ビルを生む現代の技術は神の技かもしれない。最古の木造建築、法隆寺は1300年以上の時を越え引き継がれている。建設の世界も細部にまで「神」は宿っている。(秀)
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