大分建設新聞

四方山

間違い

2023年03月22日
 かつて「3K職場」という言葉がやたらと使われた時代があった。「きつい」「きたない」、それに「危険」。バブル景気に浮かれた時代、新卒生が敬遠するブルーカラー職場を象徴する言葉だった。背景には、浮かれた時代ならではの「ホワイトカラー信仰」があったと指摘される▼バブルがしぼみ、景気後退期の「失われた30年」が始まり、ホワイトカラー族が企業業績改善のお手軽な調整弁のように首を切られる時代になると、新たに登場したのが「新3K」。「きつい」「帰れない」「給料安い」という意味だとか。低賃金で長時間労働が当たり前のIT業界を揶揄した言葉だという▼時代の変化とともに、社会の価値観も変わるということなのだろう。そういえば、厚かましい中年女性を意味する「オバタリアン」という言葉も、いわゆる専業主婦が消え、女性の社会進出が当たり前になった今日、完全な死語になってしまった▼少子化が日本社会の喫緊の課題として浮上している。だが皮肉なことに、70年代の終わりごろまでは、「少子化」を推し進めるべきという論調が主流で、政府の諮問機関は「子どもは2人以上産むな」と提言した。背景にあったのは石油ショックと、当時盛んに論じられた食料危機だった。「資源のほとんどを輸入に頼っている中、増え続ける人口をまかなうことはできない」と当時の日本を代表する研究者たちは論じた▼その効果はほどなくして表れる。生まれる子どもの数である出生数は、1973年の209万人からほど一貫として減り続け、2022年には80万人を切った。しかし、人口が急激に減れば、社会構造が大きく変わるのは自明の理である。当時の賢人たちは気付かなかったのか、あるいは見て見ぬ振りをしたのか。ともあれ、人間とは悲しいほど間違いを犯す生き物らしい。(熊)
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