大分建設新聞

四方山

黒田総裁

2023年03月16日
 歴代最長となる2期10年にわたって日本銀行トップとして金融政策の舵取りを担ってきた黒田東彦総裁。後任人事が決まり、このほど最後となる金融政策会合が開かれた。総裁として最後の記者会見に臨んだ黒田氏は「デフレ期とは様変わりし、経済は活性化した」と総括し、異次元と言われた金融緩和について「成功だった」と自賛した▼中央銀行のトップともなれば、その発言が大きな影響を持つだけに、常に強気であろうとするのは理解できるが、心底「成功」と思っているのだろうか。確かに円安が進んだことで輸出産業が恩恵を受け「就職氷河期」は過去の話になった。一方で、副作用も顕在化している。日銀が国債を買い支えることが常態化し、日銀が保有する国債の残高は10年で5倍に膨れ上がった▼財政規律の問題だけでない。日本の賃金はここ20年余、上がっていない。IMF(国際通貨基金)によると、2019~27年の日本の成長率予想は154カ国・地域中147位で、日本より下位なのはロシア、ミャンマーなど国際社会で孤立した国に限られている▼「安い国」に成り下がった日本。それでも「成功」と言うのであろうか。著名人の「守護霊」を呼び出して、「霊言」と称するホンネを聞き出すことで知られた新興宗教の教祖が亡くなった。元気であれば、黒田氏の守護霊に、本当のところの自己評価を聞いてもらいたかった▼というのは、急激な物価高が始まった昨年6月、黒田氏は「(買い物は)家内がやっている。物価の動向を直接買うことで感じていない」と発言し物議を醸したことがある。有効な手立てを打ち出せないのは、配偶者頼みの政策にあったためでは。そんな妄想が頭をよぎる。ともあれ、4月に誕生する植田和男新総裁は〝異次元〟政策の検証から始まる。(熊)
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