渡辺えりさん
2023年03月15日
豊かな声量で朗々と歌う渡辺えりさんのコンサート「人生の愛を唄い・語る」が福岡市であった。NHKドラマ「あまちゃん」にも出演し、確かな演技力で知られる女優だ▼国際ソロプチミスト福岡―中央の発足20周年記念のチャリティーイベント。銀色のドレスで登場すると、前夜に食べた博多名物を話題に。水炊きが120年前に生まれたとの説に、中に入れるキャベツはそのころ日本になかったと鋭く指摘。北海道から長崎、そして80年前に福岡に伝わり水炊きが生まれたのではと、笑いを交え場を盛り上げた▼巧みな話術で観衆をつかむと「バラ色の人生」「愛の出帆」「祈り」などを披露した。赤ちゃんを世話し、稽古し、本番を迎える女優さんを見てきた。益金を寄付するなどソロプチミストの活動に助けられた女性がたくさんいると活動の意義を代弁した。これも語る愛の一つだろう▼「大統領閣下 申し上げます」で始まる曲「脱走兵」では、男は戦わず逃げることを宣言する。「どうぞ撃ってください」と歌う渡辺さんは、舞台で大の字になった。戦争状態のウクライナ、紛争が続くパレスチナ、ミャンマー問題にも触れた▼人を愛し演劇ができる、そんな平和を求め活動してきた。だがその間、世界はどう変わったのか。活動が偽善ではと思ったこともあるという。それでも、いつか平和がくると願い「あきらめず歌い続ける」と語ったのが印象的だった▼先日の参院予算委。議論が進む反撃能力について、先制攻撃のニュアンスを隠す姑息な言い換えだと岸田首相に詰め寄る場面があった。日本は今後、巡航ミサイル・トマホークを400発購入し、国産12式地対艦誘導弾の射程を千㌔以上にして極超音速誘導弾の開発を進めるという。「平和はつくり続けないと保てない」。渡辺さんの言葉が心にささった。(秀)