大分建設新聞

四方山

認知症

2023年02月21日
 ハリウッドを代表するアクションスターのブルース・ウィリスさん。派手な立ち回りで知られた俳優だが、深刻な病状にあることが公表された。病の正体は世界の3560万人の人たちを苦しめている認知症。何年も年から「失語症」に悩んでいたという。まだ67歳である▼認知症には大きく四つのタイプがあり、ウィリスさんがかかったのは前頭側頭型で言葉が出なくなるのが特徴という。最も患者が多いのは、脳の一部が萎縮するアルツハイマー型である。ごくまれに「家族性」と呼ばれるタイプの症例があることを、ジャーナリストの下山進さんの著書『アルツハイマー征服』で知った▼文字通り家族内で遺伝するタイプで、50%の確率で原因遺伝子が子どもに引き継がれ、受け継いだ子どもは100%の確率でアルツハイマー型の認知症を発症する。同書は、東北地方に在住する若年性アルツハイマーの遺伝子を引き継ぐ人々にも迫り、逃れられない宿命にあらがいながら暮らす姿も丹念に描いている▼生まれながらにして過酷な運命に置かれた家系があるかと思えば、それとは真逆の一族もあるようだ。議員辞職する自民党の岸信夫・前防衛相の後継者として出馬表明した長男の岸信千世氏のことだ。自身のホームページ(HP)に家系図を掲載した。安倍晋三、岸信介、佐藤栄作ら政治史に名を刻む政治家と縁戚関係であることを強調するつくりだ▼それもHPの冒頭ページとあっては、「家柄」が最大の売りと言っているようなものだ。批判の声に慌てて削除したが、政策よりもお家自慢されては、有権者もなめられたものだ。余談ながらそのアルツハイマーの一族は研究機関に協力している。「苦しむすべての人たちのために」という願いである。人間として尊敬するに値するのは……。ふと思った。(熊)
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