大分建設新聞

四方山

ノルマ

2023年02月14日
 年を重ねると、涙腺まで緩くなるようだ。敗戦後のシベリア抑留の悲劇を題材にした映画『ラーゲリより愛を込めて』を観た。「ラーゲリ」とはロシア語で「収容所」のことだ。極寒の中、わずかな食糧で厳しい労働を強いられた日本人捕虜たち。想定内の展開とはいえ、何度も目から熱いものがこぼれ落ちた▼ロシア語を習得していた主人公にとって、革命で成立した労働者国家、ソ連(当時)に淡い幻想を抱いていた。だが、その共産党独裁国家は、わずかな食料で人々を厳しい労働に駆り立て人間性をも奪った。象徴する言葉が「ノルマ」である。実現不可能な生産目標を課し、達成できなければ食事を与えないなどの罰則を容赦なく課した▼日本人抑留者約60万人のうち1割が過酷なノルマに、命を奪われた。シベリアからの帰還者が広め、日本社会に定着したノルマ。ロシア語由来のその言葉には、日本人の悲劇の歴史が刻印されている▼旧ソ連型のノルマは時折、亡霊のように蘇る。たとえば農業協同組合(JA)の共済事業である。職員に厳しいノルマが課せられ、目標達成のため自腹で加入数を積み上げる「自爆営業」が常態化しているとして、農林水産省は指導に乗り出した。時事通信が1月27日に配信した記事によると、「JAおおいた」では、約7割の職員が給与総額の1割以上を共済の掛け金として支出していたことが、第三者委員会の調査で判明した▼亡霊といえば、共産党である。党首公選制の導入を訴えた党員が除名された。国政選挙で野党共闘を呼び掛けるなど、物分かりの良さそうなイメージを振りまいていたが、自由な議論すら許さない、旧態依然の体質であることを自ら露呈した。逆に批判するメディアには猛抗議している。結党101年。メッキが重すぎたのか仮面がずれ落ちた。(熊)
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